2008年にSatoshi NakamotoがBitcoinのホワイトペーパーを公開して以来、ブロックチェーンや分散型台帳が世の中を席巻していますが、ここに至るまでにどのような道のりがあったのでしょうか。
インターネットの歴史をたどると、その始まりは1960年代にまで遡ります。1960年代というと世界が冷戦のさなかにあって緊張感が張り詰めていた時代。その時にはすでに情報を処理すると言う意味ではコンピュータが存在しており、一部の人々に利用されていました。しかし、ある端末から別の端末にデータを送信することはまだできず、データを送りたい場合はデータをフロッピーディスクにコピーして郵送するなどしなければいけませんでした。
そのころアメリカでは、現実味を帯び始めた核戦争に備えて、重要なデータを一箇所ではなく複数箇所に保存し、仮にある地域が壊滅してもデータ自体は利用可能な状態を作ろうとしました。そのアイデアの下で考案されたのがインターネットの前身であるARPANetです。冷戦終結後、軍事利用から次第に民間利用に移行し、さまざまなアップデートが行われ現在我々が利用している情報基盤としてのインターネットに繋がっていきます。
インターネットが情報基盤として現在の社会に浸透していく過程で大きな課題の一つは使い勝手でした。より視覚的で魅力な仕組みが必要とされ、その解としてWorld Wide Webが発明されました。この仕組みは、1990年代以降急速に広まり、インターネット上で情報を表現するための標準と手段を提供し、より多くの人々が利用できるように裾野を大きく広げたきっかけになりました。
World Wide Webが社会で広く認知されるようになりIT革命がスローガンとなり始めると、情報技術の持つインパクトは加速度をつけて大きくなりました。プロトコルやハードウェアなどがより洗練されるにつれ、我々がインターネット上で利用できる情報がテキストから画像、音声、動画などよりリッチになり、ビジネス上の資源としても勝敗を分けるほど重要なものへとなりました。
そんな2000年代以降、FacebookやYouTube、Uberなどのソーシャルネットワーキングサービスやシェアリングサービスが続々と登場しました。この時期のトレンドをWeb2.0と呼び、それまでのWorld Wide Webがせいぜいデータを読むだけ、書くだけだったところから、ユーザー同士が相互交流ができるところまで進化しました。まさに人間関係のオンライン化とも呼べる時代が到来したのです。
ここまでで1960年代から2010年ごろまでの大きな流れを大雑把に整理してみましたが、情報基盤としてのインターネットが登場して以降、インターネット上で可能になったことという観点でみてみるとマクロなトレンドがみて取れます。
まず、World Wide Webが導入されたことで、我々は情報を読んだり書いたりすることができるようになりました。それまで大勢への情報発信はマスメディアのようなごく限られた主体に留まっていたことを考えると、とてつもなく大きな変革であると言えます。
しかし、Web1.0とも呼ばれるこの段階では一方的に情報を発信し、一方的に情報を受け取るということしかできない一方向なものに留まっていました。
2000年代以降台頭したWeb2.0がここに当たります。特徴はなんといってもIntact(相互交流)ができるという点でしょう。ユーザー同士がさまざまなテーマで双方向に情報のやりとりをすることができるようになりました。パーソナライズされた情報、リアルタイムでのコミュニケーションなど、利便性は格段に向上したことは間違いありません。
Web2.0は便利さと引き換えに、プライバシー問題やサービス停止のリスクなど新たな課題を浮き彫りにしました。各事業者はさまざまに努力をしている中ではあるものの、ハッキングによる情報流出など先行きは不透明であることは否めず、これらの課題への対応に多額のコストをかけていることも事実です。
インターネットの歴史を振り返ってみれば分かる通り、もともとインターネットはデータを管理するようにはデザインされておらず、あくまでやりとりを前提としていたものでした。データの管理はそこに接続しているコンピュータに依存しており、インターネットそのものでは管理ができないことがそもそもの元凶だったと言えます。
ここでのデータの管理とは具体的には「状態」の管理であり、それには検証できることが不可欠です。誰が何をどれくらい持っているのか、このような情報は提示されたり保存されたりしている情報が本当に正しいかを突き合わせて検証する必要があります。
Satoshi NakamotoのBitcoinのホワイトペーパーに始まるブロックチェーンや分散型台帳の開発の流れは、データを検証(Verify)できるプロトコルをインターネットにインストールしようとする試みと言うこともできるでしょう。
Web3は50年間ほどのインターネットの歴史の延長であり、決して急にきた変化ではありません。インターネットは社会に対して大きなインパクトを与えていることは誰もが認めるところだと思いますが、まだまだインターネットはよくできるでしょう。IT革命新章は始まっています。